前回の続きです。
眉下切開特別講座 眼輪筋切除が必要な理由 連載③ 眼輪筋と皮膚の関係
眉を引き上げて眉下切開のシミュレーションを行った際には、皮膚と眼輪筋が同時に持ち上がるので、
シミュレーションと同じ結果を得るには皮膚と眼輪筋の両方を切除する必要があることが分かりました。
では、皮膚のみ切除して、眼輪筋を切除しなかった場合を考えてみましょう。
まず眉毛の下ギリギリで切開し、シミュレーションで引き上げた量と同じ幅で皮膚を切除します。
切除した皮膚の下の眼輪筋は切除せず、皮膚と皮膚を引き寄せます。
皮膚を縫合したところです。
皮膚切除した部分の下にあった眼輪筋は、縫い縮められたことで元よりも厚く肥厚(ピンクの部分)します。
眼輪筋の下は空洞ではなく、ROOFや眼窩脂肪で満たされているため、
肥厚した眼輪筋はまぶたの奥に入り込むわけではなく、前方(←)に押し出されます。
その結果、シミュレーションしたようにはまぶたは薄くなりません。
次は、皮膚切除し、その下の眼輪筋をプライケイション(折りたたみ縫合)した場合です。
折りたたまれた眼輪筋は厚みが増します。
まぶたの奥にはROOFや眼窩脂肪があるため、
折りたたまれた部分は奥に入るわけではなく、前方(←)に押し出されます。
では、眉を引き上げたシミュレーション(黒実線)と、皮膚切除+眼輪筋プライケイションの眉下切開のイラストを重ねてみましょう。
黒実線(眉を引き上げたシミュレーション)の方が瞼がしっかり引き上がり、
二重幅も広くなり、目の開きもよくなっています。
この理由は、眼輪筋はかなりの厚みがあること、眼輪筋と皮膚はしっかり結合していること、
そして、眉を引き上げた時には、皮膚と眼輪筋は同時に持ち上がるため、
シミュレーションと同等の効果を出すには、皮膚と眼輪筋を両方切除(眼輪筋のプライケイションではなく)する必要があるからです。
逆に言えば、皮膚切除のみの手術は、眉を引き上げる等のシミュレーションとは違う結果になるため、
術後のシミュレーションを見せることができない手術ということになります。
ただし、加齢によって眼輪筋が薄く引き伸ばされている場合(皮膚弛緩症)や元々眼輪筋が薄い方の場合は皮膚切除のみでも、
シミュレーショ(眉を引き上げたり、クリップで眉下の皮膚をはさんだり)に近い結果になります。
皮膚切除のみでも効果が出る症例があるのはこのためです。
若い方は眼輪筋が厚く、年齢とともに薄くなっていきますが、眼輪筋の厚みは術中ですら実際に切除してみないと分かりません。
切除した眼輪筋の厚みが大きければ、眼輪筋切除の効果は非常に高く、薄くても切除した分の効果が出ます。
眼輪筋は目を開ける挙筋と機能が全く違って、目をぎゅっと閉じるときに眼輪筋全体が収縮します。
皮膚切除した部分の眼輪筋は、全体の十分の一程度であり、表面の皮膚がなくなったらその下の眼輪筋は必要なくなりますので、
切除しても何の機能障害も起きません。
したがって、手間を惜しまなければ、皮膚切除のみではなく、眼輪筋も切除した方が
どのような年齢の方でも安定した結果を出すことができます。
次回は、眉下切開特別講座 眼輪筋切除が必要な理由 ⑤術中の様子 です。